概要
住宅室内の空気には、ほこり、微生物、建材や様々な設備をはじめ日常生活によって発生する水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素等多様な化学物質が含まれます。
これら化学物質の中には、空気中の含有量がわずかであっても、人が刺激を感じるものや、さらに健康への影響があると指摘されているものがあります。
現時点では、化学物質と健康との影響に関しての疫学的な因果関係が必ずしも明らかではないものも多数ありますが、特に近年、住宅に使用される建材などから室内に放散するホルムアルデヒドなどにより、健康に影響があったとする事例が報告され、「シックハウス問題」として取り上げられるようになってきています。
実際には、住宅室内の空気中に微量に含まれる化学物質の組成や濃度は、温度、湿度、気流、住宅の気密性、建材などの使用量や養生期間、外気の影響などの多様な要因により容易に変動するものであるために、住宅の設計段階で予測することは極めて困難です。
このため、ここでは、
- a
- 住宅室内の水蒸気や代表的な化学物質の濃度を低減するための対策の基本的な手段と考えられる、 建材の選定と換気対策 の2つがどのように講じられているか。
- b
- 住宅の完成段階で室内の化学物質の濃度の実測結果がどの程度であったのか
を表示することとしています。
aの対象としては、建築基準法でその使用が制限されているホルムアルデヒドを発散する建材を採り上げ、その発散量の大小の等級が日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)において定められていますので、どの等級に相当する建材が使用されているかを表示しています。
bの対象としては、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼンの5物質を選定し、実測による評価方法基準を定めています。
性能表示項目の説明
建材の選定に関しては、次の項目があります。
- 6-1 ホルムアルデヒド対策(内装及び天井裏等)
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- 居室の内装の仕上げ等からのホルムアルデヒドの発散量を少なくする対策を表示します。
- 対策としては、以下の3つが採り上げられています。
- 製材等(丸太及び単層フローリングを含む)を使用する
工業的にホルムアルデヒドを使用しない無垢材は、ホルムアルデヒドの発散による健康への影響を防止する上で有効な材料です。 - 特定建材(ホルムアルデヒドを発散する可能性のある材料として、建築基準法によりそのホルムアルデヒド放散量に応じて使用が制限されている建材)を使用する
- その他の建材を使用する
- 製材等(丸太及び単層フローリングを含む)を使用する
- さらに、「特定建材を使用する」ことを明示する場合には、ホルムアルデヒド発散等級を表示します。
ホルムアルデヒド発散等級
- 居室の内装の仕上げ等に使用される特定建材からのホルムアルデヒドの発散量の少なさを表示します(等級3〜1)。
- 等級は発散量の少なさを示しており、日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS)の基準と連携しています。
等級3 ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆☆等級相当以上) 等級2 ホルムアルデヒドの発散量が少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆等級相当以上) 等級1 その他(天井裏等にあっては「−」と表示されます。)
換気対策に関しては、次の項目があります。
- 6-2 換気対策
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- 室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策として、次の2つの対策があります。
- 居室の換気対策
- 機械換気設備(建築基準法に適合)の有無、無い場合はその他(隙間が多い伝統的な構造・工法など)を表示します。
- 機械換気設備 : 建築基準法施行令第20条の8第1項に適合する換気対策を有するものを対象としています。
- その他 :上記に該当しない場合。
- 局所換気対策
- 換気上重要な便所、浴室及び台所のそれぞれについて、機械換気設備、換気窓の設置の有無を確認し、表示します。
- 室内空気中の汚染物質及び湿気を屋外に除去するための必要な換気対策として、次の2つの対策があります。
次の項目は、住宅の完成後まもなくの段階で、空気中の化学物質の濃度を測定するもので、選択表示事項(オプション)です。従って、申請者が評価対象・表示対象とするか否かを選択することができます。
- 6-3 室内空気の化学物質の濃度等:選択表示事項、建設住宅性能評価のみ
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- 評価対象住宅の空気中の化学物質の濃度及び測定方法を表示します。
- ここで対象とする化学物質は、健康への影響の可能性のある化学物質のうち「特定測定物質」として選定した、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンです。
- この項目を選択すれば、ホルムアルデヒドの測定は必須となります。